第91章 相変わらずの強欲っぷりだな
ステージへ向かう天の肩を、荒々しく掴む1人の男。それは、予想だにしていなかった人物であった。
「おい、九条天。あそこはもう、お前のステージじゃない」
「離して」
天を止めたのは、亥清 悠であった。そしてさらに私の後ろから、棗 巳波、狗丸 トウマがすり抜けていく。最後尾には、御堂 虎於が。こちらへウィンクを決めて歩いていく。
どうして、彼らがここに?呆気に取られてしまったのもあるが、堂々とした4人の動きがまるでスローモーションのように感じた。
彼らは悠に追い付くと、TRIGGERの横も通り過ぎる。その先にあるのは、言わずもがな…ステージだけである。
呆然とするTRIGGERに、再び悠が向き直る。
「お前らはもう終わりだ!時代が塗り替えられる瞬間を、そこで指咥えて見てろ!」
「…っ、待っ」
天が腕を伸ばすも、その4人はいよいよステージへと足を踏み入れてしまうのだった。
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「えー…、観客のアンコールの声の後、ずっと謎のBGMが鳴り続けています!TRIGGERは、いつ姿を現してくれるのでしょうか!」
(いやもう、場を繋ぐのも限界〜っ!これ以上は引き延ばすの無理!お願いTRIGGER早く出て来てっ)
「お前ら!待たせたな!」
悠が、叫ぶ。しかし観客達は、TRIGGERを待ち望んでいるのだ。だから、知らない人間がステージに上がっても、呆気に取られるのは明白だろう。が、しかし…
彼らを応援する声が混じっている。それに驚き、私は客席に目を凝らした。すると、空席だったはずの場所に、いつの間にか人の姿があるではないか。
私は、了を睨む。どうやら、これも彼の差し金らしい。埋まらなかった1.5割の空席は、わざと作られたもの。この4人を、応援する人間を招き入れる為に。