第91章 相変わらずの強欲っぷりだな
「…っは…、すごい…今までにないくらい俺達も、ファンの皆んなも、一体になれてる気がする…!」
「気がする、じゃねぇよ!俺もそう思ってる!あぁっ最高に」
「最高に、気持ち良い…っ」
「あっこら!天お前、俺の台詞横取りしやが…。まぁ、いいか。今なら腹も立たないぜ。それぐらい、最高の気分だ!」
『ふふ、そんな最高な時間はまだ続きますよ。さぁ、そろそろスタンバイを。皆んなが待ってます』
3人は明るく返事をして、ステージの袖で気持ちを作った。そしてスタッフが音響機材のスイッチを入れれば、曲が流れ始める。
「…え?」
そんな驚愕の一文字を発したのは誰か。TRIGGERか?スタッフか?それとも私?何も分からなかった。頭が、一瞬にして真っ白になってしまったから。
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「…この曲、聴いたことがないな。もしかして、また新曲?このこけら落としの為に2曲も作ったのか、あの子は。そんな無茶に応える方も、応える方だよね。ふふ」
「……違う」
「モモ?どうかした?顔色が悪」
「これは、TRIGGERの曲じゃないよっ、ユキ…!どうしよう、やっぱり、このライブをあの子達にやらせちゃいけなかった!」
「…どういうこと?」
「駄目だ…このままじゃ、TRIGGERが…潰される」
————
『何をやってるんですか早く止めて!貴方っ!流す曲を間違ってるんですよ!早く止めっ』
「間違ってません」
『はぁっ!?』
「僕は、指示された通りの曲を流しました」
Whaleの音響スタッフに掴みかかった。彼は熱くなった私に、ただ淡々と、無表情でそう告げた。
TRIGGERの3人は、その様子を前に唖然と立ち尽くしている。
辺りをよく見れば、トラブルに驚いているのは八乙女側の人間だけだった。その他の大勢のスタッフは、まるでこうなる事が分かっていたよう。
とにかく、早く曲を止めなくては。このスタッフが出来ないのなら、私が止める!
そうして操作パネルに伸ばした私の手を、誰かが掴んだ。