第11章 本当に…ありがとう
《…え?春人、さん?し、信じてくださいさい!十龍之介より私は貴方の事がっ》
あぁ、いよいよこの後だ。私が彼らに1番聞かれたく無い台詞がやってくる。
《…貴女、全く男を見る目が無いですね。そんな貴女に、私が教えてあげますよ。
TRIGGERの十龍之介は、最高に 良い男です》
「…っ、春人、くんっ」
顔を上げて、確認しなくても分かる。龍之介の涙ぐんだ瞳とか。残りの3人のニヤニヤした顔とか。
私はデスクについて 頭を抱えたまま下を向いていた。
「…春人、俺は?良い男だろ。ほら、言ってみろよ。どうなんだ。最高だろ?」
「え、じゃあボクは?どれくらい良い男?」
あぁ、もう嫌だ。消えたい。
「ありがとう春人くん、まさか、君が俺をそんなふうに思ってくれていたなんて…凄く嬉しいよ」照
素直に喜ばれるのも恥ずかしい!!
『もう良いでしょう!仕事させて下さい出て行って下さいよ!』
「あら?でもまだ続きがあるわよ」
『え?』
たしかに姉鷺の言う通り、楽の手の中のレコーダーは 音を出し続けている。
《突然、連絡してしまってすみません…。かけ直しましょうか》
サァと顔から血の気が引くのを感じた。
これは…この会話は、私と百のもので。エレベーターの中で交わした会話だ。
なんという失態。そうだ。私がレコーダーのスイッチを切り忘れてしまい、それに気付いたのはエレベーターを降りた後。
従って、このレコーダーの中には…あの時の百との会話も含まれている!