第11章 本当に…ありがとう
それに気付いた私は、音速で楽の前に移動する。
「うわ!な、…っ、天!」
私の動きに驚いた楽は、レコーダーを咄嗟に天の方へパスする。
その間も当然、レコーダーは再生され続ける。
私は、今度は天に飛びかかる。
「っ、龍!」
またレコーダーは、ぽーんと放物線を描いて 今度は龍之介の元へ。
とす、と龍之介が見事にそれをキャッチした時。ついに、あのワードを解禁してしまう。
《ん、私頑張ったよ!ありがとう。モモ》
この場にいる全員。目が点になっていた。私は皆んなが固まっている隙に、龍之介の手の中からレコーダーをもぎ取る。
そしてそのまま、紅茶が入ったマグカップの中に沈める。
「「「「あーーー!!」」」」
これで、このレコーダーは死んだ。私のあの言葉も同時に。
「ちょ、ちょっとアンタ!!こ、これっ、なんて事するのよ!!」
バックアップは取ってある。しかし今私が彼らに伝えるべきは、そんな言葉では無い。
『忘れて下さい』
「いや………無理だろ」
「いつのまにか、随分Re:valeと仲良くなったものだね」
私はその場に崩れ落ちる。
いくら後悔しても、時間が戻らないのは重々承知しているが。昨日の自分を殴ってやりたい。ホテルの部屋を出たら、すぐにレコーダーのスイッチを切りやがれ、このボケ!と。
「春人くん春人くん、大丈夫だよ。俺には何も聞こえなかったから」
しゃがみ込み、私の肩に手を置いて優しく語りかけてくれる龍之介。
『…つ、十さん…。
私は、もしTRIGGERが3人 目の前で溺れていたら、絶対に貴方から助けると今ここで誓いますよ』
「差別だろ。全員助けろ」
「意地でもその背中にしがみついてやるから」
「ねぇねぇ、アタシは〜?」
数日後発売されたMONDAYには、約束通りにしっかりと 謝罪文が掲載されていたのだった。