第90章 どうしても聞いてもらいたい話
《 大規模ドームアリーナ Whale !!いよいよオープン間近!
オープンを記念しまして、特別アンケートを実施いたします!あなたが、Whaleでこけら落としライブを行って欲しいアーティストを決める! 》
私とスタッフの男は、食い入るように画面の文字を追った。既に内容を知っていた彼が、興奮気味に私の肩を揺さぶる。
「これ!ほら!TRIGGERが!TRIGGER、いま3位なんですよ!!Whale(ホエール)って言ったら、ずーーっとオープンが待ち望まれてた巨大過ぎる化け物ライブ会場!話題性も十分ですし、もし出演を勝ち取れれば今の苦しい状況を完全に引っくり返せますよ!!」
『い、いや、うん、確かにそうですけど、落ち着いて…もう少し、詳細を見せて下さい』
彼の言う通り “ Whale ” は、1年以上前に着工が開始された大型コンサートホールだ。最新の映像技術、音響設備が約束されており、完成が待ち遠しいとの声が上がり続けている。
改めて、ラインラップされたアイドルの名前を確認する。ランキングに並ぶのは、やはり錚々(そうそう)たるメンバーばかり。
3位にはTRIGGERで、2位にIDOLiSH7。1位はRe:vale。4位以下のアーティストも、日本国民ならば知らぬ者は居ないといった顔触れだった。
「ついにうちにも、ツキが回って来ましたねぇ。結果はアンケート次第ですけどね!TRIGGERが1位になるように、全社員で願掛けでもします?
…あれ?プロデューサー?」
『え、あぁ。はい…そうですね。考えておきましょうか』
彼の言うように、これは間違いなく良い話だ。良い話、なのだが…
無性に嫌な予感がするのは、私の性格が歪んでいるからなのだろうか。