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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第90章 どうしても聞いてもらいたい話




しばらく待っても、動き出す気配を見せない楽。瞬きすら忘れてしまっているようだった。そんな彼に、龍之介は声掛けする。


「楽?楽、平気?」

「あっ、あぁ!悪い、なんともない。ちょっと、宇宙はどうやって誕生したのかって考えてただけだ」

「っぷ…、衝撃のあまり、宇宙の神秘に迫ろうとしてるの笑えるんだけど」

『笑えるわけないでしょう。楽に宇宙へ旅立たれたら、明日からTRIGGERの活動はどうするんです』


それでも、楽が懸命に事実を受け止めようとしているのは伝わってくる。下向けた頭を ゆっくりと左右に振って、何度も大丈夫だ。大丈夫だ。と独り言のように呟いた。その後、長い息をゆっくりと吐く。


「ふーーー…。で、いつからだ?
あ、いや。んなことは、わざわざ訊かなくてもいいか。天、は、聞かされてたのか?それだけ冷静ってことは、知ってたんだろ。
あぁ。違うな。これも、べつにどうでもいい。俺にも打ち明けてくれたんだから、問題ないよな。うん、そうだ…
はっ!お前ら男同士で、どっちが上…って!!俺は何を聞こうとしてんだよ!!」

「えっと。楽、もしかしてすごく混乱してる?」

「するだろそりゃ!龍が男と付き合っててそれが春人だってんだぞ!?今でも目瞑ったら、満天の星空が見えるんだよこっちは!冷静を装うのがやっとなんだ…」

『いや、装えてない装えてない』

「まぁ気持ちは分かるよ。それに、全く同情をしないでもない。
だから今パニック状態に陥っているキミに、ボクがほんの少し手助けしてあげる。そのごちゃついた頭を整理する為のね。

楽。言いたい事、訊きたい事は沢山あると思う。その中で、いま一番 気になってる事は何?もし、二人に対してたった一つの質問しか許されないのだとしたら。キミはどんな内容の問いを、二人に投げ掛ける?まずは、それを口にしてみて」


天の声は冷静で、淡々と、静かに鼓膜を震わせる。凪いだ湖の水面を、風が撫でるように美しかった。
楽はその言葉にしっかりと頷いた後、私達の顔を確認し、口を開く。


「お前ら、いま…幸せか?」


私と龍之介は、互いの顔を見合わせる。こんな、愛しか詰まっていない質問を前に、返す答えなど決まっている。


「うん!」

『はい』


楽は嬉しそうに、くしゃっと笑った。

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