第90章 どうしても聞いてもらいたい話
「ラジオネーム、シークレットモーニングさんから。
はじめまして。私は22歳の女性、都内で会社勤めをしています。実は私には、凄く好きな人がいます。恋人関係を目指すべく、猛アタック中の日々です。ですが、全く脈がありません。もう2年近く追い掛けているのに。周りには、いい加減に諦めろと言われています」
「うっ!」
へんな呻き声を上げた楽を、天が睨み付ける。龍之介は、心配そうな表情を浮かべて楽を見つめていた。
ハガキの内容は、まだ続いている。
「連絡先を聞いてもスルーされました。さらには好きな人がいるとのこと」
「うぐっ」
「もう会えないとまで言われてしまいました。こんな状況では、やはり諦める他ないのでしょうか」
「ぐはっ」
まぁものの見事に、私が楽にした塩対応と被り散らかしていた。楽は、自分のことを重ねてダメージを負っている。さすがの私も気不味くて、ついブースから目を逸らしそうになる。
と、その時。こちらをチラッと確認する天と目が合った。その目が語っている。
「……」
(ねぇ、これってキミが仕組んだ?)
『……』
(いやまさか。私の差し金だとしたら、やり方がエグ過ぎるでしょ。何の恨みがあって楽を再起不能にしようとしますか)
ふるふると首を横に振ると、天は再び進行役へと戻る。
「相手が振り向いてくれないのって、辛いよね。だから、もう諦めちゃいたいって気持ちになるのも分かる。でも、諦める事はいつでも出来る最後の手段だから。もう少し、取っておいたら良いんじゃないかな。
まぁ、未成年のボクの意見なんて説得力がないかもしれないですけどね」
「天…っ」
「ちょ、」
(ちょっと楽。そんな目でボクを見ないで!べつにキミへ贈った言葉じゃないんだから)
天の心の声が、私には手に取るように分かるのだった。