第11章 本当に…ありがとう
「そっか。龍、よかったね。プロデューサーも、お疲れ様」
「お前、なんか色々と無茶苦茶だけどやっぱ凄いな」
2人も龍之介のように、感謝の意を全身で表してくれても良いのに。なんて冗談を言ってみようかと思ったけれど、当然やめた。
「……それで?」
天が首を傾げる。
『…それで?とは…?もう何もやる事はありませんよ。あとは出版社の謝罪文が載ったMONDAYの発売を待つだけです』
「そんな事分かってる。そうじゃなくて…ほら、早く出せ」
楽は私に向かって手を差し出すと、手の平を上に向けた。
『……まさか』
まさか彼らは、レコーダーを出せと言っているのだろうか。何を馬鹿な事を。そんな物 出すわけがないではないか。そもそもあれは社長に提出済み。ここには
「はーい!ここにあるわよー」
『何故ある!!』
当たり前のようにノック無しで入室してきた姉鷺。私はガタ!っと椅子から腰を上げる。
「おお!ナイス姉鷺!」
なんとしてでも止めなくては。なんとしてでも止めなくては!!
「…春人くん、今回俺は 自分では何も解決出来なかった…君に頼りっきりで 甘えるだけだった。
だからせめて…君がどんなふうに、俺の為に戦ってくれたのか 自分の耳で確かめたいんだ。だから…頼む。
聞かせてくれないかな。この中身を」
『……』
天や楽は置いておいて、龍之介は極めて純粋だ。どうして私はこうも、心の綺麗な人間に弱いのだろうか…
おそらくだが、自分には無い物を持っている人間に 惹かれているのだろうな。
『…せめて、私の居ないところで聞いて下さいね』