第89章 年季が違うからね
「お、いたな。春人にTRIGGER」
現れたのは、凰塚製薬の御曹司こと百の友達、加藤である。
『カトちゃん…。いたな、じゃないですよ。どうして貴方はいつもアポなしでここまで入って来れるんです?』
「おいおい。俺にそんな口きいて良いのか?せっかくお前らに仕事持って来てやったのに」
3人は、えっ?と声を上げた。
3人というのは、私と楽と龍之介である。天だけは、こうなる事が分かっていたみたいに笑顔を見せていた。
「加藤さん?仕事もらえるのはありがたいけど。いいんすか?俺達いま…」
「あぁ知ってるよ。何が理由か知らんけど、ツクモとやり合ってんだろ?」
「あんた、それを知ってて俺らに仕事を?」
「そうだよ。まぁ仕事って言っても、そんなにデカイ奴じゃないけど。悪いな。今の俺の力じゃ、ラジオとか衛星放送の15分枠ぐらいしか回してやれなくて」
楽と加藤の話に、龍之介が割って入る。
「それでも十分ありがたいですよ!でも、本当に大丈夫なんですか?俺達に仕事を流したってツクモに知れたら、凰塚製薬さんにまでご迷惑がかかるかもしれないのに」
「気にすんなって。べつにこれまでだって、ツクモに良くしてもらった記憶もねぇしな」
「加藤さん…ありがとうございます」
『どうしてですか?』
私は加藤の前に歩み出る。
『どうしてこの状況で、私達に仕事を回そうなんて…。今のTRIGGERに関わるなんて、百害あって一利なしですよ』
「プロデューサー。事実だけど、他に言い方なかった?」
「どうしてって言われてもな。さっきも言ったけど、べつにツクモには義理も何もねぇし…」
『でも、敵に回してはいけない相手だということくらい、貴方なら分かるでしょう?』
「あーーもう!お前はごちゃごちゃうっせぇな!」
加藤は、私の顔面に人差し指を突き立てて叫ぶ。
「友達を助けたいって思うのに、わざわざ他に理由なんか必要あんのかよ!」