• テキストサイズ

引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第89章 年季が違うからね




ハンドルを切り、ゆっくりとカーブを曲がる。前方には車の列が出来ており、局に着くのはギリギリになりそうだ。この道は避けるべきだったかな。なんて、渋滞を前にぼんやりと考える。
そう。ぼんやりとしていたからだろう。俺はつい、いらぬ言葉を ぽろりとこぼしてしまう。


「でもそっか。君達には、彼女がそんなに元気そうに見えたんだね」


え?と、3人が口を揃えて言う。そこで初めて、しまった。そう思った。


「エリの事は1番分かってるみたいな口ぶりですね。さすがは元彼様」

「えっ!?も、元彼っ!?」

「りっくん、知らなかった?バンちゃんとえりりん、昔 付き合ってたんだって。あっ。でも、ちゅーも出来なかったんだって」

「環くん?人の苦い過去を嬉しそうに話さないで欲しいんですけど」


恥ずかしさと気不味さから、思わずブレーキを過剰に踏んでしまう。ガクンと、車が変に揺れた。


「でもまぁ…この中だと、彼女を1番分かってるのはやっぱり俺だと思うよ。年季が違うからね。そんな俺から言わせてもらうと、今日のエリは、やっぱりいつも通りじゃなかった」

「んー…えりりん、疲れてた?」

「疲れては、なかったかな」

「じゃあ もしかして、心の中では悩んでましたか?」

「ううん。悩んでる感じじゃなかった。何か、もう吹っ切れてるみたいだったし」

「万理さん、そろそろ勿体ぶらないで教えてもらえますかねぇ?」


痺れを切らした大和が、俺をせっつく。ちょうどその時、前方の車が動き出した。なるべく緩やかにアクセルを踏みながら、俺が感じた彼女の状態を口にする。


「エリは多分、落ち込んでる」




/ 2933ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp