第89章 年季が違うからね
【side 大神万理】
彼らが八乙女プロダクションに滞在出来たのは、約1時間ほどだっただろうか。実はこれでも、かなり無理をして時間を作ったのだ。本当なら、もう少し話をさせてあげたかったし、全員を連れて来てあげたかった。しかし、それは土台無理な話だ。
さきほど彼女に話した通り、本来TRIGGERの仕事だったものがIDOLiSH7へと流れたから。スケジュールは詰まりに詰まっている。だからこの後すぐ、この車で局へ直行だ。
それを察したのであろうエリは、こちらから言い出さなくても帰りを促してくれた。今は他人に気を回してる余裕なんて、ないくせに。相変わらず、過剰に気を回すんだから。そういうところが、放っておけないのだ。
「でも、TRIGGER 元気そーで良かった。なぁ、りっくん」
「うん!天にぃの顔が直接見られて安心した!でも、無理言っちゃってすみませんでした、万理さん」
「いいよ。俺も、来て良かった」
「へぇ。それって、久しぶりに、誰かさんに会えたからですか?」
「うーん。まぁ、そうかな」
「ちょ、そこは否定して下さいよ…」
自分から振っておいて。俺が乗っかったら、大和はげんなりと項垂れた。
「えりりんも元気そうで、良かった」
「環が選んだ差し入れの王様プリン、美味しそうに食べてたね!」
「へへ。おう。
俺がいっぱいカンチョーって言ったら、チョー笑ってた」
「タマちゃーん。その話、まだ引っ張る?」
「あはは!中崎さん、意外と笑いのツボが浅いよね!」
「俺のカンチョーパワー、最強」
「環くん…お願いだからそれ、他所では言わないでね」