第89章 年季が違うからね

「でも、中崎さんが元気そうで良かったです。天にぃ達も、大丈夫ですか？オレがラビチャしても、心配いらないよ。しか言ってくれなくて…」

『皆さん、お元気ですよ。私の方がパワーを分けて貰っているくらいです。彼らがいるレッスン室にご案内するので、ぜひ話を聞いてあげて下さい』

「ありがとうございます！
あっ！春人さんモードですね。えへへ、本当に元気そうで何だか安心しました」

『ふふ。仕事中に力を抜いているところを見れば、鬼のように怒り狂うプロフェッショナルの権化がいるので』

「えっ、鬼って！そんな人がいるんですか？！怖いなぁ…」

「いや、ぜってーてんてんのことじゃん」

「天にぃは鬼じゃないよ！天使だもん！」


レッスン室へ向かう道中。最後尾を歩いていた大和が、落ち込んだトーンで声を発す。


「今更だけどさ。タマもリクも、ほんとピュアで良い奴だよな。連絡寄越さなかったぐらいで怒ってたの、俺だけだった…。なんか、恥ずかし」

『自己嫌悪モードですか？
そもそも私が連絡を返さなかったのが悪かったんです。それに、怒られて嬉しかったですよ。さっきの怒りは、心配の表れですから』

「はは。そんなもん？あんた相変わらずMっ気 強いな」

「大和くん。今の台詞は、ちょっと聞き捨てならないかなぁ。相変わらずって何？Mっ気って？」

「おっと。思わぬところで万理マネージャーのセンサーに引っ掛かっちまった」


絶対にわざとだ。そんな言葉を飲み込み、私は先を急ぐ。


「なぁなぁ。なんか、さっきから人少なくない？」

『そういう道を選んでますから』

「ふぅん。なんで？」

『あまり考えたくないですが、社内にツクモからの間諜が居ないとも限りませんから。
その人が、貴方達の訪問をツクモに告げ口したら、皆さんを巻き込んでしまうでしょう？』

「べつに、んなの気にしねーのに。ってか、カンチョーって、あのカンチョー？何で、ここでカンチョーが関係あんの？謎過ぎ」

「た、環！間諜っていうのは、スパイの事だよ！」

「あ、そーなんだ」

『ふ、っふふ。実はその反応が見たくて、わざと煩わしい言い回しをしたんです。期待通りで、面白い…っ』

「あんた…なんつーか、本当に通常運転だよな。お兄さん凄い安心した」