第89章 年季が違うからね
新しい声に驚いて振り向くと、そこには不満顔をした大和がいた。そのままずんずんと近付いて来て、あまりの剣幕に思わず後退る。
『ご、ごめん!言い訳だけど、物凄くバタバタしてて!ちゃんと連絡返そうとはしてた!たとえば、今日とか!そう!今日とか!』
「嘘だ」
『ほ、本当です…』
「ちょっと大和くん。俺が呼びに行くまでは車から出ないようにって言ってたのに」
「あんたがなかなか呼びに来ないからでしょうが。2人きりで話してたかったのは分かりますけどねぇ」
「いや、そうじゃなくて」
申し訳なさそうにこちらを見る万理を目の当たりにして、私はハッとした。そうだ。今や芸能界には、TRIGGERの悪評が渦巻いている。そんな中、八乙女事務所に大和がいて、仲睦まじく私と話していては…彼らも、どんな噂を立てられるか分かったものじゃない。
『とりあえず人目のつかない場所へ移動をし』
「中崎さーーん!!」
「こら環!万理さんに、車から出るなって言われただろ!?」
「っ、環くんと陸くんまで…。はぁ。なんで少しの間も大人しくしてくれないんだ、君達は」
頭を押さえる万理の隣を、するりと通り過ぎて。環は手持ちのビニール袋の口を大きく開いて私に説明する。
「中崎さん!これ、見て。これ、王様プリン。こっちが抹茶で、こっちが期間限定のカボチャ味。あ!コンビニでスプーン貰ってくんの忘れた…スプーン、ある?めっちゃ買って来たから、あんたと、TRIGGERも。一緒に食おう」
『ふふ。ありがとう。タマちゃんも心配、してくれてたんだね。王様プリン嬉しい。皆んなで一緒に食べよう』
「!!
へへ、おう!」