第89章 年季が違うからね
彼らは、茨の道を選んだ。私という生贄を、差し出してしまえば全てが解決出来たのに。
「4人なら、俺達は何者にも負けないよ。これまでみたいに、一緒に乗り越えていこう」
「これまでみたいに。そう上手く行くかな。今回は、今までとは違う」
「何だ、天。ビビってんのか?戦う前から逃げ腰かよ」
「そうは言ってないでしょ」
『天の言う通り、かなり厳しい戦いになるでしょうね…
とりあえず、社長にはさきほどの話は内密にお願いします』
「さっきの話って、ツクモがお前を欲しがってるって奴だよな」
楽の言葉に、こくりと頷く。すると龍之介が、不安そうに小さく手を上げる。
「でもさ…その了って男が、社長に直談判するんじゃないかな。TRIGGERを助けたければ、春人くんを差し出せって」
『恐らく了は、社長への直接交渉はしないと思います。当面の間は、ですけど』
「え?どうして?」
『了の目的は、私をツクモからデビューさせる。それともう1つ、大きな目論見があるからです。
それは…私が苦しむところを、鑑賞すること』
3人は、信じられないとばかりに目を見開き口を開ける。
「まじか…どれだけ歪んでんだ、了は」
「人の、もがき苦しむところを見て楽しむなんて。本当に、そんな人間がいるのか…」
「残念ながら、いるだろうね。
それが、今日キミが直接会って来た男なんでしょう?」
私は頷く。
しかしそうは言っても、本気で了が動けばどうなるか分からない。きっと、どんな手を使っても私を手中に入れるだろう。
勝負は、了がまだ楽しむ余裕を見せている間。それまでに、彼を失墜させる一打を見出さなければ。
それが、私達4人が導き出した当面の目標だ。