第11章 本当に…ありがとう
社長が通話を切り、私の手元に携帯が戻ってくる。
「…来週のMONDAYに、謝罪文が掲載される事になった」
彼の言葉に、ほっと胸を撫で下ろす。
「全面的に自社の非を認め、ヤラセだったと公表する約束をした」
『…世間からのバッシングは、避けられないでしょうね』
「同情の余地は無い」
下手をすると、あの出版社は潰れてしまうかもしれない。彼の言葉は厳しいものだったが、正論だ。
『では、私はこれで。ここ数日バタバタしたので 雑務を片付けてきます』
「…中崎」
部屋を出ようとする私を、彼は呼び止める。
「今回は、助かった。礼を言っておく」
社長は、真っ直ぐこちらを見て言った。彼でも、こんなふうに素直に感謝を言葉にしたりするのだな。
そう思ったら、なんだか気恥ずかしくて 私は自分から目を逸らした。
『し、仕事 なので。お気になさらず。あ、いや…もしあれだったら、ボーナス下さい』
びっくりして、しどろもどろになってしまった。そして今度こそ、私は社長室を後にした。
数時間後、ソロの仕事から帰って来た龍之介。彼が一番乗りで私の仕事部屋に飛び込んで来る。
「春人くん!!」
まだ息が整わない内に、彼は自らの携帯画面を私に見せ付ける。
「こ、これ!詳しく聞いてもいい?!」
その画面には、私が数時間前に龍之介に送った文面が写し出されていた。
《 勝利 》
「さすがに良い意味なんだろうなって事は分かったんだけど、直接話がしたかったんだ」
『そのままの意味ですよ。例のモデルに会って、言質を取りました。そしてそれを出版社に叩き付け、来週のMONDAYに謝罪文の掲載を約束させたんです。
私達が思い描いていた理想が、100%通りましたよ』