第11章 本当に…ありがとう
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翌日。
私は社長にボイスレコーダーを提出していた。中身を一緒に確認する。
例の女性の、決定的な言葉を聞いた八乙女宗助は、ニヤリと口角を上げた。
「よくやった」
彼は満足げにレコーダーのスイッチを切った。
『朝一番に、出版社へ 録音のコピーデータを持って行きました。本人に渡す事は叶いませんでしたが、受付の人に
早くこれを担当者に渡して 中身を確認しないと大変な事になる。と脅しまがいの言付けもしてきましたので、おそらくすぐに直接連絡が来るかと…』
その時、なんとも素晴らしいタイミングで私の携帯が振動する。
着信画面には、例の出版社の番号が表示されていた。
『…社長。どうぞ』
私はその電話には出ずに、自分の携帯を手渡した。
彼は着信画面をほとんど確認もしないまま、通話ボタンを押した。するとすぐに、私の方まで相手の大きな声が響いてきた。
「…今回は…うちのTRIGGERが世話になったな」
社長が言うと、ぴたりと電話口は静まり返った。
「その様子だと、アンタも聞いたようだな。
はは。随分と汚い真似をする。さぁ、こっちには勿論 本物のデータがある。
これをどこにリークしてやろうか?アンタのところのライバル出版社か。それとも大手新聞社にしようか…。
……あぁそうだな。他社から公表されるよりは、自社から謝罪記事を出した方が 幾分は世間からの糾弾はマシかもしれないな」
相手方の声が聞こえなくても、社長の言葉を聞いていれば どんな内容で話が進んでいるか なんとなくは理解出来た。
なんとか一件落着。と言ったところだろう。