第11章 本当に…ありがとう
なんだか、どっと疲れてしまった。
おそらく、目標を完遂した安心感から来る 気の緩みもあるのだろうが。とにかく疲れた。
どんどん降りるエレベーターの中で、思わずへたり込んでしまいそうになる。
私は、今日の朝 百から貰ったばかりの言葉を思い出す。
疲れて癒されたいと思ったら、自分に連絡しろ と。彼は言った。
私はほぼ無意識に、携帯に手をやってボタンをタップしていた。
《もしもし?!モモちゃんだよー!うわー、珍しいなぁエリちゃんから電話なんて!オレ超ハッピー!》
彼の大きな声の後ろ側には、ガヤガヤと喧騒が。おそらくどこか外で会食か…、居酒屋で飲み会か打ち上げか…。
なんとなく、電話をかけた事を後悔した。
『突然、連絡してしまってすみません…。かけ直しましょうか』
《いやいや全然大丈夫!エリちゃんからの連絡なら、いつでもどんな時でもオールオッケーだよん》
この人の言葉は、不思議といつも私の心を軽くしてくれる。
『…例の件、なんとか片付きそうなので。報告をと思いまして。お力添え頂いて、ありがとうございました』
《お!良かったねぇ!凄いじゃん!エリちゃん 本当によく頑張ったね》
『!!』
よく頑張ったね。そう言われて、自分でも気が付いていなかった気持ちに気が付いてしまった。
そうか、私は…
誰かに、褒めてもらいたかったのだろう。
こんな感情、初めてかも。そう自覚したら、なんだか恥ずかしくて、面白くなって来た。
《もしもし!?大丈夫!?今どこ?ねぇ、オレ今からそっちに》
『ん、私頑張ったよ!ありがとう。モモ』
《…えっっ??な、…ちょっと待って何それ。ちょ、お願い今のもう1回くださ》
私は通話終了のボタンを押した。
エレベーターの扉が開く頃には、私はいつもの私となんら変わりなかった。