第88章 合言葉をはいどうぞ!
この威圧感に勝てる人間など、そうはいないだろう。2人はしぶしぶ部屋を後にする。その際に悠は、最後の最後まで私に対し睨みを利かせていた。
そしてトウマは、口を尖らせて悠に文句を言っていたようだ。お前のせいで俺まで退場くらっちまった、と。
「狗丸さん、御自分も子供認定されていた事に気付いていませんでしたね」
「だな。あれだけ騒げば、追い出されるのも仕方ない。英雄にしちゃ、みっともなく喋り過ぎだしな」
2人が出て行った扉を見て語る、巳波と虎於。対して、去った者には興味がないといった様子で、嬉々として私へ向き直る了。
「さぁ!ようやくまともな話し合いが出来るよ!君はどんな話がしたい?春人くん。いや…
何故か突然 行方をくらませた歌姫。Lio 」
『!』
「あっ、それともエリって呼んだ方がいいかなぁ?うーん、作曲家Hってのも捨て難いけど…
君はどれがいい?あはは!沢山あって迷っちゃうね☆」
Lio という事だけでなく、私の本名やHだという事実まで…。どうやら、相当 調べ上げられているらしい。
そして、虎於や巳波も驚いた様子を見せていない。前もって了から聞かされていたのだろう。トウマと悠も、知っているのだろうか。
「君がいま気にしている事に答えてあげようか?
全部を話したのは、ここにいる2人だけ。さっき追い出したお子様2人には、何も話していないよー?」
『そうですか。可哀想に。あの2人だけ、仲間外れというわけだ』
「あはは!面白い事を言うねー。仲間外れどころか、仲間なんてどこを探してもいるわけないじゃないか!
そもそもそんな下らなくて不必要なもの、作るつもりすらないんだから」
了の言葉に、本人だけでなく、他の2人も唇を歪ませていた。