第88章 合言葉をはいどうぞ!
王様に睨まれた兵士のように、ぐっと口を噤むトウマ。それを見て了は見事な早技で、今度は笑みを顔に貼り付ける。そして、仕切り直すべく顔を再度こちらへ向けた。
「彼ら4人は、僕が世間の人達の為に用意してあげた… “ 英雄 ” だ」
『英雄?』
「そうだよ。そう遠くない未来、人々は皆、光を失って戸惑い…不安で押しつぶされそうになり叫ぶ。助けてぇー!怖いよ暗いよぉー!
そんな時。目の前に、突如として光源が現れるんだ。君なら、群衆がどう動くか分かるだろう?」
『当然のように、光に縋る』
「その通りだ大正解!慌てふためき恐怖する人間の為に、縋るべき物を用意してあげる僕は、あぁっ!なんて優しくて慈悲深いん」
「そんな話、どうだっていい!了さん、なんでこいつがここに来たのか早く説明して!こんな奴…!1秒だって一緒にいたくない。顔を見てるのも胸糞悪い!」
気持ち良く講談している最中に、再び腰を折られた了。ピリリと部屋の空気が張り詰める。
しかし そんな空気なんて御構い無しに、今度はトウマが口を開く。
「ハル!だからこいつは誰なんだよ!なんで知らないのが、この中で俺だけなんだ!?」
「はぁ!?そんなのオレが知るわけない!」
「だから!お前でいいから教えてくれって言ってるんだ!」
「だから!TRIGGERのプロデューサーだってさっきから言ってるだろ!?」
「いや言ってねぇから!初耳だから!!」
ギャーギャーと言い争う悠とトウマ。呆れ笑いを浮かべる巳波に、こめかみを押さえて首を振る虎於。そして了はというと…。
2人に向かって、笑顔でこう告げた。
「うん!退場」
2人は全く同じタイミングで、争いをやめて了へ顔を向けた。
「大人しく待てが出来ない子供、大嫌いなんだよねー。ほらトウマ。悠を連れて、早くここを出て行け」