第88章 合言葉をはいどうぞ!
部屋の中へ足を踏み入れたのと同時、私は度肝を抜かれることとなる。
勝手に、社長室の中には了1人だと思っていた。しかし室内には、5人もいたのだ。
了、そして…亥清 悠、狗丸 トウマ、御堂 虎於、棗 巳波の、計5人である。
どうして、この4人がここに?また、どういう理由があって、この4人は集められたのだろうか。頭の中が疑問符に占拠された私に、了は声を掛ける。
「やぁー!待ってたよ!ん、ちょっと違うかな?待ちくたびれたよ!」
弾かれるようにそちらへ視線を向けると、そこには想像したままの彼がいた。ソファに腰掛け、膝の上で指を組む彼の姿があまりに思い描いた通りで、ほんの少しだけ安堵した。了の姿に安心感を覚えるなど、不思議な気持ちだ。
「は!?なんで あんたがここに来るんだよ!了さん!どうなってんの?オレらに会わせたいって言ってたの、こいつのこと!?」
「ん?誰だ?」
私を指差して、了に食ってかかる悠。
対してトウマは、こちらを見て首を傾げていた。彼と会ったのは、春人ではなくエリの時の私だ。当然の反応だろう。
「やっぱりな。俺は、ここに来るのはあんただと思ってたぜ。絶対にまた会えるって、分かってたからな」
「私も、予想はついていましたよ?再会が、こうも早く叶うとは思っていませんでしたが」
相変わらず、自信に満ちた笑みを浮かべる虎於。巳波は、壁に背中を預けながら興味なさげに呟いた。
了は、私を驚かせたかったのだろうか。だとしたら、その目論見は大成功だ。
「いいね、その顔、最高だ!やっぱり人を驚かせるのは気分がいい」
『…彼らは一体』
「んーダメダメ!まだ秘密だよ!彼らはとっておきのサプライズなんだ!でも、僕を楽しませてくれたお礼に、ヒントだけあげよう。
彼らは…4人はね、僕が用意した 英ゆ」
「いや、だからこいつは誰だっての!俺だけ置いてけぼりやめろよな!」
ビシっと決めるところだった台詞を、ぶった切られてしまった了。彼は恨めしげな視線を、トウマへと向けた。