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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第88章 合言葉をはいどうぞ!




「天の言う通りよ。こっち側はね、アタシ達の領分。任せておきなさい。あんた達が味わった悔しい気持ちを10倍くらいにして、お返ししてやるんだから!」

『社長。月雲了に、会って来ます』

「分かった。やり方は任せる。時間はかかるだろうが、なるべく早くアポを取って直接 話を付けて来い」

『時間は、おそらくそうかからないと踏んでいます』


どういうことだ?と、社長の鋭い視線が飛んでくる。明らかにピリついた彼に、私は恐る恐る あの日の事を語る。


『…実は、私にも…ツクモからの勧誘がありまして』

「っ、どうしてそれをもっと早く言わなかった!!」

「おい!俺も初めて聞いたぞ そんな話!」


親子2人から、同じくらいの声量で責められる。こうなる事が分かっていたから、報告する気がしなかったのだ。


『すみません…こんな事になるとは思っていなかったので。
それで、引き抜きの話は社長である月雲了から直接受けました。その際、渡された名刺がこれです』


私は名刺ケースからそれを取り出し、デスクの上に置く。裏面を、上へ向けて。
私以外の全員の視線が、名刺に注がれる。

あったのは、数字の羅列。桁数からして、携帯の番号で間違いないだろう。それから、添えられたメッセージ。

“ 早く連絡して来てね! ”
さらには、ご丁寧ハートマークが末尾を飾っていた。


『こちらから連絡する事になると、彼は分かっていたんでしょうね』

「あのクソガキ…っ!!」


今にも名刺を握り潰さんとする社長から、慌ててそれを回収した。


『と、とにかく。この番号に連絡すれば、おそらく受付や秘書なんかをすっ飛ばして 社長に繋がるはずです』

「分かった。私が自ら動くわけにはいかんからな。とりあえず、お前に任せる。出来るだけ早く会って来い。奴が何故、突然 矛を振りかざしたのかは分からんが…なんとしてもその矛を収めるよう交渉してくるんだ。
姉鷺は、その間 TRIGGERの側にいろ」

「分かりました」


楽が、俺も連れて行ってくれ。と言いかけたのだが、その台詞を最後まで口にする事は出来なかった。途中で社長が、睨みを利かせたからである。


「向こうが何か交換条件を持ち掛けて来た場合は、その場で答えを出さず一度 持ち帰れ。いいな」

『承知しました』


小さく頭を下げ、私達は社長室を後にした。

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