第88章 合言葉をはいどうぞ!
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以前、私と龍之介に声を掛けて来た、強引なスカウトマン。明らかに様子のおかしかった彼は、確かツクモの人間だった。
そして、八乙女プロの振付師と、レギュラー番組の構成作家を引き抜いたのもツクモだ。
さらには、TRIGGERといっしょ の後番を担当するのがツクモのタレント。
あと、先日会った 棗 巳波はこう言っていた。私のプロデュース権はツクモに移りました。
極め付けは、あけぼのテレビのパーティで会った、ツクモの若社長…
『なんだか最近、やたらとツクモの名前を聞くようになったと思ってはいたんです。もしかすると、何か良からぬ事を企てているのかもしれない。
今日 局へ赴き、そんな予見が確信に変わりました。
この一連の騒動。裏で動いているのは、ツクモプロダクションで間違いありません』
私。TRIGGERの3人。そして姉鷺を含めた5人は、社長室に集まっていた。
今日の報告と、今後の対策を練る為だ。
「っチ…あの小僧風情が…。一体どういうつもりで」
『TRIGGER、八乙女プロダクションをターゲットにしているのは間違いありませんが。その理由までは、今はまだ何とも』
「俺が、ツクモの本社に行って直接聞いてきてやる!」
「ちょっと楽!馬鹿なこと言わないでちょうだい!あなたが出て行っても、話がややこしくなるだけでしょう!」
「でも姉鷺さん、このまま何もせずに黙っているなんて。俺達には出来ません」
龍之介も楽と同じで、直接 乗り込みたいのだろうか。しかし、そんな事を社長が許すはずがない。もちろん私もだ。
これ以上、2人が口を開けば社長の雷が落ちる。しかしそうなる前に、天が私に向かって口を開いた。
「ボク達は、そちら側に足を踏み入れない方がいい。だってそっちは、キミ達の領分なんでしょう?」
不敵に微笑んだ彼に向かって、私は満足げな笑みを返した。