第88章 合言葉をはいどうぞ！

『…そうでしたね。貴方達は、そういう考え方をするタイプの人間でした』

「文句あるか？何度だって言ってやる。もう、俺達の為に何かを捨てるのはやめろ。
さっきお前が、あの作家に言った答えこそ 100点なんだよ」

『っぷ。はは！やった。満点もらっちゃいました』

「おう。男の俺が惚れ惚れするぐらい、さっきのあんたは男前だったぜ」

「…龍。聞いた？男前だったんだってさ」

「あはは。うん。それも、惚れ惚れしちゃうくらいの男前だって」

「な、なんだよ。俺、なんか変な事言ったか？」


眉の間に皺を寄せる楽。天と龍之介は2人で顔を見合わせて微笑むのであった。

私は、車を走らせながら今日の出来事を思い返していた。突如として、混乱の渦に飲み込まれた私達。そしてその中で交錯する、様々な人の心。

TRIGGERを想い、身を移す者。影ながら応援する者。共に戦おうと言う者。やり方は違っても、皆んな彼らが好きなのだ。

そんな人達の為に、そしてTRIGGERの為に。私が出来る事。そんなのは、決まっている。


『…龍』

「うん？」

『サンドイッチ、いま持ってますか』

「あるよ。
って…もしかして春人くん、ずっと何も食べずに！？」


私は龍之介から受け取ったサンドイッチに、間髪入れず齧り付く。今度こそ、食べ損ねないように。
いつもなら、もう少し時間をかけて食すのだが。今だけは腹を満たす事に集中した。


『ご馳走さま。美味しかったです』

「お粗末様でした。それなら良かった」

「それにしても、すげぇ勢いで食ってたな」


私は、汚れた指先をペロリと舐めて 口の片端を上げる。


『腹が減っては戦が出来ぬ。昔から、そう言うでしょう』

「…戦って。キミらしい言い回しだね。
それで、その相手はやっぱり」

『えぇ。
ツクモです』