第88章 合言葉をはいどうぞ!
「私にね、ツクモから引き抜きの打診があったの」
『ツクモ…』
「TRIGGERといっしょ は終わる。ツクモに来て、ツクモの番組の為に台本を書けって。従わないと…お前も、TRIGGERと一緒に沈めてやるって」
『なっ!』
「でもね、春人くん。安心して。私は、ツクモ側には回らないから。
どれだけ圧力をかけられたって、業界から干されたって、貴方達と一緒に戦う。
だって私、TRIGGERが好きだから。貴方の事が…大好きだから」
私が、今まで地道な努力を重ねてきたのは、こういうピンチが訪れた時の為。彼女のように、私やTRIGGERの為に身を犠牲にすると言ってくれる存在を増やす為だ。そんな彼女を、利用しない手はない。
そうだ。TRIGGERを守る為なら、他はどうなったって構わない。そう…思っていたはずなのに。
気が付いたら、私は彼女を抱き寄せていた。
「!?」
『ううん。駄目です。貴女は、ツクモに逆らっちゃ、駄目』
「でも…っ」
『貴女は才能がある。その誘いに乗れば、きっとツクモも悪いようにはしないはずです。私達と一緒に、茨の道を行く必要なんて ないんですよ』
「春人…く」
『お願いです。どうか今は、大人しく長い物には巻かれていて下さい。
私達は、大丈夫ですから。TRIGGERは、こんなところで終わらない。私が、終わらせません』
「長い物には巻かれろだなんて…私はっ」
それでも、まだ何か言いたげに口を開こうとする彼女。そんな唇に、人差し指を そっと乗せる。
『今は、って。言ったでしょ?
少しの間、我慢してて下さい。しばらくしたら、僕が絶対に 貴女を迎えに行くからねっ』