第88章 合言葉をはいどうぞ!
『ツクモ…』
「ツクモって…じゃあなんだ?今回のことは全部、ツクモの仕業だってのか?」
「後番をツクモプロのタレントが担当するって事実だけで、それを決め付けるのは強引だと思う」
天はそう言ったが。私は知っている。
“ だけ ” では、決してないことを。
ツクモは、他にも様々な件に関わっているのだ。もう、決定付けて良いかもしれない。
今回の黒幕。おそらくは…
「プロデューサーさんは、どうして このスタジオにいらしたんですか?」
「それは…君達が、今日ここでCM撮影をすると聞いてね。ちょっと、気になって。見に来てしまった」
龍之介の質問に、悲しげな表情で答えるプロデューサー。彼は、その表情のままで、顔をセットへ向けた。そして続ける。
「でも、中止になったんだね。
…君達が今ここで、いつも通りライトを浴びてカメラを向けられていたら…どれほど良かっただろう。
でも。そうか…やっぱり、撮影はなくなってしまったんだ」
泣き出してしまうのでは。そうこちらが心配になるくらい、彼は落胆して言った。
どう声を掛けたら良いか。私が迷ってる間に、龍之介が口を開く。
「なくなってませんよ」
「え?しかし…」
「確かに、今日は中止になっちゃいましたけど。でも、きっとすぐに替わりの撮影日は決まりますから。
だから、大丈夫です。俺達は、TRIGGERは、どこにも行きません。居なくなったりしません」
「……龍之介くん」
「俺、TRIGGERといっしょ が大好きです。プロデューサーさんや、ファンの皆んなと一緒に作り上げていく感じがする、あの番組が本当に気に入ってたんです。
またすぐ、一緒に仕事が出来るよう頑張るので。その時はまた、よろしくお願いします!」
男は、まるで眩しい光でも前にしているかのように、龍之介の顔を見て目を細めた。