第88章 合言葉をはいどうぞ!
と、その時。扉が薄く開かれる。慌てて私達は、とっさに物陰へと姿を隠した。
そこから様子を伺うも、暗がりのせいで誰が入って来たのかはっきりしない。
その誰かは、先ほどの私達 同様、組まれたセットをただ見上げて立ち尽くしていた。
ようやく、その人物の正体に気付く。
彼は、TRIGGERといっしょ の、総責任者であるプロデューサーだ。
それが分かった私は、物陰から一歩を踏み出した。
『お疲れ様です』
「っ、君達…」
姿を現した私達に 彼は驚いた顔を向け、ただ一言。告げた。
「……ごめん」
言葉がなくても、私達には分かる。
彼は、番組打ち切りについて頭を下げているのだ。
『誰かに、命令されたのですか?』
「僕の口からは、なんとも…」
ガチャリと。扉の方から音がする。どうやら、鍵が閉められた音らしい。そして、扉の前に立っていたのは天だ。
「これで、ボク達がここで話している事実が外に漏れることはありません。
だから、教えて下さい。いま、何が起こっているのか」
「…僕も、今日 ほんとに突然、社長から言われたんだ。いっしょは、打ち切りだって。
どこかから圧がかかってるのは、明白だった。でも いくら訊いたって、お前は知らなくていい の一点張りだ。
ごめん。僕が知ってるのは、これくらいで…」
「なら、制作会社の社長を問い詰めたら理由ははっきりするな」
「ちょっ、楽!物騒なことは」
『視聴率も好調。クール切り替えの時期でもない。そんな中での打ち切り。これだけ急な打ち切りが、強引に決行されるということは…
もう決まってるんですよね?後釜』
「あ、あぁ…僕も詳しくは聞いてないんだけど。なんでも、ツクモプロのタレントが、放送枠を引き継ぐらしい」