第87章 こっち側は、私の領分だから
「オレはべつに、に、逃げてないっスよー?」
『ですよね。それだけド派手な頭をしておいて、逃げ隠れ出来る訳ないですから』
彼はピンクと金色の髪の毛に手をやって、黒に染めようかなぁと呟いた。
そんな中、天は思い出したように言う。
「何度か、スタジオ収録でお世話になったスタッフさん…ですよね」
「あー…こんな しがないスタッフのオレを認知してくれてるなんて、ありがたいっすねー。あはは…」
それじゃオレはこれで…と、やっぱり場を去ろうとする彼。私は逃すまいと、ガッツリと肩を組んで顔を近づける。
『ほら、やっぱり逃げようとしてるじゃないですか。冷たいですよー?私達は、2度も合コンへ一緒に赴いた仲なのに』
その台詞を聞いた3人は、合コン!?と声を揃えた。
「あ、いやー、実は春人くんには前に、オレのバイクを貸したことがあって…。そのお礼にって、合コンに付き合ってもらった過去が、確かにあったりなかったり」
【23章 499ページ】
「へぇ。それで?戦果はどうだったんだ?楽しめたのか?」
「よくぞ聞いてくれました八乙女さん!それがですね!この人、可愛い女の子ぜーーんぶ攫ってっちゃうんスよ!?普通1人につき1人だから!全員持ち帰るとかありえないから!」
『そういう特殊ルールがあるなら、最初に教えておいてくれないと』
「特殊じゃないの!普通なの!男の一般教養の範疇でしょうが!!」
『そうなのですね。また1つ勉強になりました』
「ちぇっ!もう2度と、春人くんは誘ってやんない」
申し訳ないが、彼にそう思ってもらう為に 私は必死で興味のない合コンに取り組んだのだ。もう誘いの声が掛からないのなら、それはこちらの思惑通りだ。
「ふふ。さすが。TRIGGERのプロデューサーを名乗ってるんだから、それくらいじゃなくちゃね」
「あはは!春人くんはモテるからなぁ」
「ちょ、なんで 皆さんそんなに嬉しそうなんですか…!オレに可愛い彼女が出来なかったってことなんだから!!ここは、そんなオレに同情するとこっスよ!」