第87章 こっち側は、私の領分だから

『まずは、いま起こっている問題の全てを洗い出し、原因の究明に努めます。
私がこれから各部署をまわり、どんなトラブルを抱えているのか把握。その後、解決しなければならない問題に優先順位を付け、ひとつずつ片付けていきましょう。
最初は、この部屋から一番近い制作部から伺います。他の場所にも必ず行くので、情報をまとめて待っていて下さい』

「了解です…」

「待ってます」

『あぁそれから、ひとつだけ。
自分達が悪くない場合は、決して謝罪はしないで下さい。申し訳ありませんとか、すみませんとか。こちらに非がないのに頭は下げないで。
一体、どんな敵が私達に牙を剥いているのか。今はまだ分かりませんが…
八乙女プロの人間なんだという矜持だけは、常に胸に留めていて下さい。安い、情けない態度だけは取らないように。よろしくお願いします』


他部署の3人は、私より一足先に退室した。私も手早く持ち物をまとめ、彼らの後を追う。
そんな私に、メンバー達は心配そうな視線を向ける。


『あはっは。なんて顔してるんですか』

「春人くん…」

「お前、笑ってる場合じゃねぇだろ…」

『今まで、私が本気を出して解決出来なかった問題がありましたか？なかったでしょう。
だから、大丈夫ですって。アイドルがそんなに暗い顔、しないで下さい』

「プロデューサー。ボクたちに、出来ることは？」

『そうですねぇ。CM撮影、と言いたいところですが。さっき聞いてもらった通りバラしになりそうなので…
とりあえず、レッスン室でダンスの練習でもしててもらえますか。その間に、私がトラブル解決しちゃいますので』


そう軽口を叩き。出来るだけ自然な笑顔をその場に残して、私は歩き出したのだった。