第87章 こっち側は、私の領分だから
「プロデューサー!大変です!」
『…何がありました』
次に部屋になだれ込んだのは、営業の人間。彼もまた、肩で息をして私に詰め寄る。
「来月のライブで押さえてたホールが、急に、使えないって!」
『ちょっと…、待って下さい!そんな馬鹿な』
「しっ、失礼します!!
中崎プロデューサー!いま、局から連絡があって!今日のCM撮影、バラしにしてくれって!なんかっ、使う予定だった機材が空かないからっていう訳の分からない理由で突然っ」
「おい!割り込むなよ!今は俺が話してるだろ!」
「こっちは緊急なんだよ!今日の事だぞ!今日の!」
「こっちだってなぁ!ライブが出来なくなるかもしれないって瀬戸際なんだよ!!」
「それなら俺の方だって急いで解決しなきゃいけない案件だ!」
各部署から集まった人間で、部屋はごった返した。我先にと口を開く男達をなだめようと、龍之介が割り込む。
「ちょ、ちょっと落ち着いて!」
『……』
「なんだよ、これ。俺たちが知らないところで、いま何が起こってんだ…」
「分からないけど…裏で、何か大きな力が働いてるのは間違いない。
目には見えない圧力が、ボク達を…八乙女プロを、潰そうとしているのかも」
天や楽の表情が、焦りと不安で揺れる。
言い争う男達を横目に、私は立ち上がる。
『…いい加減に』
「アンタたち!いい加減にしなさい!!」
私の代わりに声を張り上げたのは、いつのまにか側に立っていた姉鷺だった。
彼は腰に手を当てて、3人の職員を怒鳴りつける。