第87章 こっち側は、私の領分だから
「…違う。僕は、自分で、望んで…ここを出てくんだ」
誰に、何を言うなと言われているのだろう。それは私には分からない。しかし、分かる事もある。
それは、望んで出て行こうとする人間が、こんなにも悔しそうな顔をするはずがないということ。
『そうですか。分かりました。特に明確な理由もなく、ここを去るのですね。
残念です。貴方は私と同じように、TRIGGERを愛しているのだと思っていたのに』
「君と、同じように?」
『えぇ。ですが私の見込み違いだったようです。彼らを影から支えたい、一緒に高みを目指したいと思ってない人間は、ここには必要ありません』
「同じなわけ…ないだろ!!
僕は、君よりもずっと、TRIGGERが好きだ!君がここへ来る前から、一緒に頑張って来た!それこそ、彼らがデビューする前から一緒に頑張って来たんだ!
支えたくないはず、ないだろう…っ!上を目指したくないはず、ないじゃないか!
出来ることなら、僕だってずっと近くで…TRIGGERが頂点に立つのを見たかったさ!」
まるで、決壊したダムの水流のごとく。彼の言葉は止まらなかった。一度溢れ出した想いは洪水のように、全部全部 外へと流れ出た。
私は、満足だった。彼の本当の想いを、聞く事が出来たから。
『やっと本音を話してくれましたか。
それにしても、貴方 嘘を吐くのが下手ですね。向いてないですよ。あれくらいの挑発で、根負けしてしまうなんて』
「うるさいなぁ。
でも、もしかしたら僕は…本心では、誰かに聞いて欲しかったのもしれない」
『それで。そんなTRIGGERを愛する貴方を、ここに居られなくしたのは誰なんですか?
ここまで話したんだから、もう白状して下さいよ』
「……ツクモ、プロダクション」