• テキストサイズ

引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第86章 あの人に近付いちゃ駄目だ




————


「はぁ…」

「龍。もう溜息やめたら」

「ま、50%を外したら溜息も出るよな」


階下に待たせてあるタクシーへ向かう途中。龍之介は、何度目か分からない溜息を吐いた。
そんな彼の手には、ビンゴの景品がある。それにはこう書かれていた。
“ 恐竜の化石 発掘セット ”

まったく…誰にどんな忖度をしたら、ビンゴの景品にここまで知育玩具が揃うのか。


「春人くんに、ハワイ旅行をプレゼントしてあげたかったなぁ…」

『お気持ちだけで。それに、化石の発掘も楽しそうです』

「本当?良かった…じゃあ、一緒にやろうか」

『ふふ。はい』

「お前ら、ほんとそういうチマチマしたの好きだよな」


揶揄うように楽が言い放った、その時。後方から、私の名を呼びながら彼がやって来た。


「おーい!春人ちゃーん!」

『!』

「百さん?そんな慌てて、何かあったんすか?」

「ん、まぁちょっとね!
良かった、帰る前に会えて」


こちらに、ちろりと視線を投げる百。私は 何かあったのかと、さきほど楽が問いかけたのと同じ内容を口にした。


「ただ、ちょっと一言謝りたくて。
あの人の前で、オレ…嘘とはいえ、春人ちゃんに たくさん酷いこと言っちゃったからさ。
ごめんね!あんなの全部、口から出まかせだから!」


百は、ぱん!と目の前で手の平同士を合わせる。楽、天、龍之介の3人は、突然 謝罪を始めた百を驚いた瞳で見つめていた。


『百さん。大丈夫ですよ。あれが、本心からの言葉だなんて 私は元より思ってません』

「…ほんとに?」

『はい。気にしてません。
だって私は、退屈でつまらない人間でもないし、付き合いだってべつに悪くないし、それにご飯も美味しそうに食べるし、ゲームだってめっちゃ上手いですから』

「ほんとに気にしてないんだよね!?」


飛び跳ねるように驚く百。私が、冗談ですよと笑いかけると、ようやく彼は安堵の息を漏らす。

/ 2933ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp