第86章 あの人に近付いちゃ駄目だ
「相変わらず、皆んな仲が良いよね!それに、家族ごっこかぁ…楽しそう」
「リクが長男だって。ふふ、おかしい」
「俺達の場合はどうなるんだろって、つい考えちまうよな」
楽の弾んだ声に、私は顎に手をやって答えを返す。
『私がママで、龍がパパ。そして天が、私達を将来すごーく楽にしてくれる孝行息子です』
「頑張って稼ぐよ ママ。あと、こんな場所でにやけ顔 晒さないでくれる?パパ」
「ご、ごめん、つい」嬉しくて
「おい。俺がいねぇだろ。どこいった」
『楽は……い 』
「それ以上言ったら噛み殺してやるからな」
『…凄くお利口で、格好良い子ですよ?』
「ならいいか、ってなるわけねぇだろ」
私は、シベリアンハスキーのイメージを脳内から打ち消した。
天が小さく、あ。と口にした。楽がしっくり収まるポジションでも見つけたのか。そう思ったが、どうやら違ったようだ。
天の視線は、龍之介のビンゴカードに注がれている。
「龍。それ、ビンゴじゃない?」
「え……あ!本当だ!」
龍之介は、手に持ったカードと、ステージ上のモニターを交互に見て言った。
それからカードを上に掲げて、ビンゴを宣言するのであった。
残りの景品は、あと2つ。その内のひとつは、なんとハワイ旅行である。つまりは、50%の確率で大当選だ!
「春人くん。俺が君を、ハワイに連れて行ってあげる」
『龍…期待してます』
「だから現実問題、行けねぇっつーの」
「聞こえてないよ」二人の世界に入ってる