第86章 あの人に近付いちゃ駄目だ
25番!と、ゲーム進行の男が叫ぶ。私は自分のカードにひとつ穴を開けた。
「ワタシは、貧乏という情報よりも…なぜアナタの家のテレビの大きさを 九条氏が知り得ているのかという方が気になりますね」
「たしかに。それ知ってるってことは、九条は春人の家行ったって事だよな。八乙女と十さんは?」
三月の質問。楽は、腕を組みながら。龍之介は視線を下に落として答えてやる。
「ねぇな」
「俺も…行ったこと、ないんだ…」
私は、心の中で叫んでいた。
龍にそんなに悲しそうな顔をさせてしまうなんて!!来たいなら、家くらい いつでも連れて行くのに!!というか、そんな事に気付かなくてごめん!!
「おーおー、心の中で叫んでるって顔してんな」
『ぐ…二階堂さん、分かっているなら、私の事はそっとしておいて下さい…っ』
龍之介と暮らすようになってからも、私は賃貸の解約をしていなかった。理由はもろもろある。
私の私物を全て龍之介の家に運ぶのは骨が折れる。それに、もし解約手続きをした事が社長の知るところとなれば…
私に恋人が出来たと悟られる可能性があった。あの社長のことだ。そこから、私と龍之介の関係に気付かないとは言い切れない。
45番!
進行役が、3つ目の番号を発表した。
『あ』
「あ!春人くん、それ…リーチじゃない!?」
「すごいね」
「へぇ。やっぱ俺のカードすげぇな」
TRIGGERの3人は、私のカードを覗き込んで言った。他の皆んなも、そのあまりのスピードに驚いている。
そんな中、一織が口を開く。
「そういえば、あなたが本当に狙っている景品は何なのですか?」
『ズバリ…ハワイ旅行へのご招待券』
「意外ですね。その手の景品は、あなたの手には余るのでは?」
「たしかに。俺もイチと同じこと思った。あんた、ゆっくり旅行なんか行ってる時間ねぇだろ」
『ですね。だから、金に換えます』
一織と大和に、嬉々として言い放った。
すると、それを聞いた陸が 悲しげな声を出す。
「うぅ…やっぱり、天にぃと言った通り、プロデューサーさんは貧乏なんだ…」