• テキストサイズ

引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第86章 あの人に近付いちゃ駄目だ




『っ、百、離れて』

「どかない。離れるのは、君が了さんに近付かないって約束してからだ」

『違う!誰か来る』

「えっ!」


この非常階段に繋がる、非常扉。そこに誰かが近付いて来る気配を察知した。
咄嗟に、百の身体を押し返そうと その肩に両手を置く。しかし。彼との距離を取る前に、扉が開かれてしまう。

ここへやって来た人物は、驚きから固まる私達を見て、首を傾げて言い放つ。


「……浮気?」

『はぁ…』

「バ、バンさん!?」


万理は私達に爽やかな笑顔を向けつつも、手早く扉を閉める。百は慌てて私から体を離して、両手をぶんぶんと振り乱した。


「ちっ、違うんですよバンさん!こうなってるのには理由が、ですね!ユ、ユキには言わないでぇっ!」


どうやら万理の “ 浮気? ” 発言は、自分に放たれた物だと認識している百。間違い無く、それは私に対しての言葉なのに。
私も百の真似をして、龍には言わないで。なんて、万理に泣きついてみようか。


「あはは。言わないから安心して。それより、いま百くんが言った理由って?」

「それが聞いて下さいよバンさん!春人ちゃんったら、オレの忠告なんて全く聞き入れてくれなくて、危ない事にばっか首突っ込むんです!」

「あぁ…うん。そうだよねぇ。分かるよ。俺も昔は苦労したから」

「へ?昔?」

『万理。余計なこと言わないで』

「はいはい」

「ば、万理?」


百は、私と万理の顔を交互に見て、目をきょとっと動かした。万理の意味深な言葉。そして、敬語を使わずに彼を呼び捨てにする私。
何がどうなっているのか、理解が及ばない様子。

/ 2933ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp