第85章 かっけぇわ
「…春人ちゃ」
「えっ、ビンゴ大会!?いいねいいねぇ 楽しそうだ!おもちゃ、あるかな!?おままごとセットとか!」
『あると良いですね。では、月雲社長。またお会い出来る日まで。失礼致します』
どことなく、ほっとした表情を浮かべる百。どうやら、私の判断は間違っていなかったようだ。
内心で安堵しながら、2人に背を向ける。しかし。そんな背中に、了の冷たい声が張り付いた。
「交渉は決裂?」
『…交渉も何も、私は今の仕事が気に入っていますので。お声掛けいただけた事は光栄ですが、どれだけの高待遇だったとしても、お受け出来かねます。申し訳ございません』
「そっか、それは残念だなぁ。
もしも君が、ここで僕の誘いに大人しく頷いていれば…運命は、変わったかもしれないのにね」
ねっとりとした、高圧的な物言い。
私は振り向く事もせず、言葉を返す事もせず、ただ前へと足を進めた。
「予言してもいいよー!
君は近々、自分の足で僕のところへやって来る。それからこう言うんだ。
“ どうか私の為に、貴方の貴重なお時間を頂戴出来ませんか? ” ってね!あっはははは!愉快だね!とても楽しい気分だ!」
「ちょ、ちょっと了さん!」
馬鹿馬鹿しい。
そう、思っていた。この時は。
それは、私がツクモを侮っていたからに他ならない。いや、それは少し違う。
この、月雲了という男の本質を、理解出来ていなかったのだ。
もしも彼の言った通り、私がここで イエスと答えていたならば。果たして未来は、本当に違う側面を見せてくれたのだろうか。