第85章 かっけぇわ
『……あの』
「なーーんてね!実は、モモに紹介してもらなくても君の事は知ってるんだ。
八乙女パパの会社の看板アイドル、TRIGGERのプロデューサー。中崎 春人」
ツクモと星影。この二大巨頭が、この業界を牛耳っていると言っても過言ではない。そのツクモの社長が、私の事を知っている?明らかに不自然。
一体何故だ…
了は、こちらを見て ニタリと口角を歪めた。
その顔を見た瞬間、私の頭の中で 何かが弾ける。
唐突に、思い出したのだ。私はやはり彼に会っている。あれは…4年半以上も前。私がまだ、歌えていた時だ。
そう。私が了に会ったのは他でもない。
私が、Lio としてステージに立った あの日だ。
【46章 1053ページ】
「ねぇ。君さぁ…」
『はい』
顔には出さぬよう努めたが、内心はかなり焦っていた。
まさかこの男、知っているのか?過去の私を。
私とLioと春人。まさか、それらを結び付けているのではないか。
そんな不安が、口や目から溢れてしまいそうだった。
「優秀なんだってねぇ!飛び切りに!」
『え…、いや、そんな』
「謙遜しなくてもいいよ。僕は、優秀な人間が大好きなんだ!ねぇ、今ってお給料いくら貰ってる?肩書きとか昇進とか興味ない?ないわけないよねぇ!そんな人間、居るわけないんだから!」
『???』
「うちにおいでよ。僕と一緒に、楽しいことやろう!」
踵と踵をピタっと合わせ、背筋を伸ばし。そして両手をパーっと天に広げた了。
かなり注目を集めたし、度肝は抜かれたが。そんな事は些細だ。正体に、気付かれていないのであれば。