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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第85章 かっけぇわ




了は、百の腕を掴んだかと思うと ツカツカと靴を鳴らした。さらに、こちらに近付いて来たのだ。人々は、自然と彼の為に道を開けた。
まるで、荒波がモーゼの為に道を作ったように。


『は、はじめまして。私、八乙女プロダクションの…』


彼の切れ長の目が、カッと見開かれて こちらを覗き込む。私の瞳を、じぃっと覗き込む。
あまりの距離の近さに、言葉を紡ぐのも忘れて背中を反らせる。


「綺麗な目玉だ…。キラッキラしてて、ガラス玉みたい。きっとカラスが沢山寄ってくるね!くり抜いてデスクに飾っておきたいくらいだ」

『…私にもし3つ目があったなら、喜んでひとつ差し上げるのですが。残念です』

「はっはー!やったね!じゃあ予約しちゃう!もしおでこに3つめの目が現れたら僕にちょうだーい?
あぁその時はもちろん、モモの八重歯の隣に飾るよ!」


だいぶ変わってるな。初対面で、目をくり抜きたいと言われたのは初めてだ。
いや、それよりも。八重歯の危機だというのに、百は俯いていた。唇を噛んで、ただ押し黙って。


「ほらモモ。黙りこくってないで紹介してってば。仲、良いんでしょ」

「え、な、仲良くなんてないよ!全然!事務所も違うしさ、ほら!なんて言うか…もう友達どころか知り合いでもない赤の他人!」

『ひっど』

「あはは!ほんと、酷い奴だねモモー。

でも僕には…大切に大切にしてた宝物が他人に見つかっちゃって、それを後ろ手に 必死に隠してる子供みたいに見えるよ」

「っ…」


なんだ?いま了は、百の耳に口元を寄せて 小声で何かを囁いた。
こちらには、彼が何を言ったのか聞こえなかったのだが…。百の顔が、苦しげに青ざめた。

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