第11章 本当に…ありがとう
「お、俺も行くよ!そんな、ホ、…ホテルだなんて!春人くん1人じゃ心配だし、それに…。
俺も、ちゃんと直接あの人に確かめたい。どうして、こんな事をしたのかって。きちんと話をつけたいんだ」
「…龍、お前…」
勿論、彼の言う事は分かる。ハメられた張本人なのだ。きっちり納得のいく理由を、彼女から聞きたいのも分かる。しかし…
「龍。ここはプロデューサーに任せるんだ。キミが顔を出してしまえば、彼女は警戒する。
だから、ボク達は…彼を信じて待てばいい」
天の口から、私を信じて。という言葉が出てきた事に。場違いなのは分かっているが、つい胸が熱くなる。
私の代わりに言いたい事を説明してくれた天。その理由を聞いて、龍之介は引き下がってくれる。
「…そうだね。分かったよ。ごめん、自分勝手な事を言って」
『いえ。大丈夫です。私はきっちり仕事をこなしてくるので。九条さんの言う通り、私を信じて待っていて下さい』
私は、龍之介の肩にポンと手を置いて。言い切った。
「……彼は、こういう狡猾で悪賢くてズルくて汚い事は 凄く得意そうだから 信じて待っていれば良いよ」
『九条さん、それはもはや悪口です』
彼は今更ながら、私を信頼していると口にしたのが恥ずかしくなったのか。嫌な照れ隠しを見せた。
「ふふふ。いいじゃない。馬鹿な人間よりは、計算高い人間の方がよっぽど魅力的よ」
「まぁ…それは、いいとして
春人お前、ホテルって…変な事する気じゃないだろうな」
ちょっとだけ気まずそうな楽の顔。やはり、親子なのだな。と思う。さきほどちょうど、全く同じ表情を見たばかりだ。
私は腕時計に目をやって、楽に答える。
『ご想像にお任せしますよ』
「なっ、」
「不潔」
「お、俺のせいで春人くんが汚れるっ、!」