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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第85章 かっけぇわ




「どんな言葉でも聞く、って。さっき言いましたよね」

「うん。言ったよ」

「じゃあ、言っちゃいます。多分、あんたにとっては愉快な話じゃないでしょうけど」


こんな前置きになどビクともせず、龍之介は力強く頷いた。これが、これから聞きたくもない話をされる男の顔か?
まぁ勿論、罵ったり暴言を吐くつもりはないが。


「俺、あの人には…結構救われたんですよね。
しんどい時には、背中押してもらって。ずーっと欲しかった言葉、もらったりして。
でも多分、そういうの全然 関係ないんです。助けてもらったとか、優しくしてもらったとか、そういうの抜きにしても俺…

エリのこと、本気で 好きでした」


言った。言って、しまった。
俺のこんな言葉を、龍之介はただ押し黙って、真剣に聞いてくれた。

そして。一度はポケットにしまったハンカチを、再びこちらに差し出した。
それを見て、俺は自分が涙ぐんでいる事に気付いたのだった。

情け無いにも程がある。俺はくるりと身を返して、彼に背を向ける。そしたら今度は、鏡の中の自分と目が合ってしまった。どこにも逃げ場がなくなって、残された選択肢は目を瞑る事だけ。

しかし、それは出来ない。

だって、いま目を瞑ってしまったら…
瞳に溜まった涙が、きっと溢れてしまうから。

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