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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第85章 かっけぇわ




「んでさ、これ見て」

『??』


料理カウンターに皿を置き、環は懐から ある物を取り出した。それは、DVD。私も知っているタイトルだ。高校生の時に観た事がある。万理の部屋で、彼と一緒に。

確か、内容は…


「めっっちゃ面白かったから、あんたにも観て欲しい!」

『…えっと、観た事 ある』


そう。内容は、こうだ。
幼い頃に結婚の約束をした男女がいた。しかし2人は時の流れの中で離れ離れになってしまう。数年後、女は職場で出会った男と恋愛をし、付き合う事になるのだが。やはり昔、将来を誓い合った男の子が忘れられなかった。やがて運命的な再会を果たした2人は、晴れて結ばれ結婚する。

いわゆる、女が昔の男を選ぶ。という王道恋愛ストーリーだ。


『……これは?』

「万ちゃんから借りた」

『そうですか』

「万ちゃんも、これめっちゃ好きで、週1で観てるんだって」

『うぅっ』万理っ


とにかく、これを環に観せた上で、私と龍之介の事を上手く伝えてくれた万理には感謝をしないと。


「だから、えりりんも、最後に選んでくれればいいから」

『え?』

「だからぁ、今は他の奴と一緒に居ても、最後は俺を選んでくれるって、信じってから。
好きな人を、信じて待つ!これが、大人の余裕ってやつだろ!へへ」


鼻の下を擦りながら、胸を張る環。
愛する者が、自分の知らないところで、誰か他の人の物になっている。そんな現実、辛くないはずがないだろうに。

環は、そんな苦しい素ぶりなど見せないで、私の前で笑っている。

いつの間にか 本当に彼は、大人の男になっていたのだ。


『…ふふ。でも、大人はプリンを独り占めしたりはしませんよ』

「えっ、じゃあ…ちょっとだけ戻す」

『あぁ!ちょ、戻すのは もっと駄目です!』


その後 私は、環からその懐かしのDVDを借りた。家で観てくれと言われたが、これを龍之介と一緒に鑑賞する気にはやっぱりなれないので。1人の時にでも、もう一度ゆっくり観てみようと思う。

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