第85章 かっけぇわ
「本当なら、私も挨拶に周りたいところなのですが。問題を起こしそうなのは、四葉さんや六弥さんだけじゃありませんから」
そう言って一織は、再び陸に視線を向ける。そして、あの人がいつドジをやらかしてもフォロー出来るように側に居ないと。と付け加えた。
私も、ぼんやりと談笑を続ける4人を見つめる。しかし内心では、環と大和がこの場に居ないことに安堵していた。
公私混同するつもりはない。だから、決して顔には出さない。が、きっと私は考えてしまうだろう。
環を前にすれば、恋人が出来た事を話すべきか否か。
大和を前にすれば、まだ彼の心は痛むのだろうか。と。
「ぉわっ!」
「わぁっ!!す、すみません!八乙女さん!」
楽の驚く声。陸の謝罪が、私を現実へと引き戻した。目視で状況を確認すると、どうやら陸が楽の衣装にジュースを引っ掛けてしまったらしい。
「何でよりによって股にこぼすんだ、まぁいいけどよ」
「ごめんなさいっ!オレ、すぐおしぼり持って来ます!」
「ふっ、ふふ。すごい位置…っ。ダッサ」
「おい天。お前の弟のせいでこうなってるって分かってるよな?」
「まぁまぁ、陸くんも悪気があった訳じゃないんだから。抑えて楽」
「七瀬に悪意がねぇのに天にはあるから怒ってるんだけどな?」
全身が紛う事なき格好良いのに、股だけを濡らした楽が面白くて。出来るならずっと眺めていたいが、そうもいかない。
私がハンカチを持って近付こうとすると、一織がそれを制した。
「こういう時に対処出来るよう、私は七瀬さんの側に居たんです。
八乙女さんのお股は、私が責任を持って完璧に綺麗にしてみせます」
「お、おう…」
物凄く気合を入れた一織が 自分の前に屈む姿を見て、楽は少しだけ引いていた。