第85章 かっけぇわ
《 この歌を聴いてくれるキミ達が、大好きだよ。だから、その心を癒してあげたいな。このボクが天使の代わりに…いや、天使そのものとなって、皆んなの心に舞い降りるから 》
「……自分で天使って言っちゃ駄目でしょ」
「あははは!面白ぇな!天を真似てるつもりなのか!」
「もはや不思議ちゃんみたいになってる…」
天を意識したメインボーカルのトークに、天は呆れ、楽は笑い、龍之介は驚いた。
《 俺ってSだからさ、常に誰かをいじめてねぇと落ち着かないんだよ。だからお前ら…俺の事、何があっても応援しろよな?でないと、お前らの事もいじめちまうぜ? 》
「……まさかこれは、楽の真似か!」
「ふふ、そっくり」
「おいこら!どこがだよ!!」
楽を意識した男は、画面の中で綺麗なウィンクを決めていた。まさか本人達も、本家本元に見られているとは思ってもいないだろう。
《 俺は、夜になると野獣に変わる。今夜、襲われたい奴は…どこのどいつだ? 》
「………〜〜〜っっ!!」
「どうして龍が照れるの」
「顔、真っ赤だぞ」
『…似てるのは、曲や見た目だけでしたね。
全く。パクるならパクるで、もう少し研究をしてからメディアに出て来て欲しいものです』
あまりに出来の悪い偽物に溜息を吐く。そして、テレビの電源を落とした。
「そろそろ出た方が良いんじゃない?」
『はい。行きましょうか』
私は天の言葉に頷いて、立ち上がる。
見栄えのする衣装に身を包んだTRIGGER。パーティスーツを着込んだ私。
これから向かうのは、あけぼのテレビ。
開局50周年のパーティに出席するのである。