第11章 本当に…ありがとう
よし。ここでの作戦はこれで終了だ。予定通り、彼女はガッツリと餌に食いついてくれた。
とりあえず一度、事務所に戻って社長に報告と。あとはレストラン等の予約を取ろう。
私は頭の中で、その後のシミュレーションをしながら会社へと戻る。
事務所に戻ると、姉鷺やTRIGGERのメンバーは まだ帰っていなかった。
とにかく社長に報告に行く事にする。
『そういうわけで、今夜 そのモデルに会って なんとか話を聞き出してみます』
私は懐に忍ばせたドライブレコーダーを社長に見せながら言う。
「分かった。必ず言質を取れ」
『了解です。ところで…。
社長オススメの “ ホテル ” はどこですか?』
「……は?」
今度は何を言い出したんだコイツは。という表情を隠しもしないで、八乙女宗助は片眉を上げた。
『出来れば、食事の美味しいレストランがあって。部屋からは東京の夜景を一望できる部屋が欲しいです』
私がここまで話すと、彼は徐々に事情が飲み込めてきた様子。そう。今夜、例の読モとゆっくり話が出来る場所を決めかねているのだ。もし彼にオススメのホテルがあれば、そこに決定してしまおうと思っていた。
「…お前、自分が言葉足らずな自覚を持て!周りの人間も言ってるぞ」
周りの人間とは…。姉鷺や楽辺りだろうか。
言いながらも社長は、デスクの中から名刺入れを取り出して。中身を1枚 私に突き出した。
「このホテルの支配人とは長い付き合いだ」
その名刺は、アール・ロイヤルホテル 総支配人の物だった。彼に連絡をすれば 良い部屋とレストランを用意してくれるだろう。
『ありがとうございます。この名刺、少しの間お預かりしますね』
部屋を去ろうとする私の背中に、社長が声をかける。
「お、お前…」
??
「女にまで、色を使うのか」
どことなく狼狽したような社長。私はそんな彼に、しっとりと答える。
『…さぁ、どうでしょう。
ご想像にお任せしますよ』