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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第84章 その日が来る事を心待ちにしています




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私がここに住まうようになってから、すぐの頃。龍之介は言った。

夜眠るベットは、同じがいい。でも2人で寝るなら、セミダブルは狭いだろうか。ダブルサイズの物に買い替えようか。

私は、その提案には乗らなかった。

たしかに、体の大きな龍之介。女にしては大柄な私が2人で並ぶには、セミダブルは少し狭い。
でも。狭いベットのせいにして、体をくっつけて眠ったり。こうやって、龍之介に抱き締められたまま眠りに就くのが、好きだから。


「エリ…もう、寝た?」

『ううん。まだ、起きてるよ』


至近距離から聞こえてくる、落ち着いた声色が心地良い。

鼻先を、はだけたシャツから覗く胸板にくっつけて。私は彼に、どうしたの?と問う。
すると龍之介は、抱き締める腕に きゅっと力を込めて言葉を返す。


「…前から、気になってたんだけどさ。
エリはよく、好きだって俺に言ってくれるよね」

『言うねぇ』

「俺も、もっと気持ちを伝えた方が良いのかなって。
その…どうしても、恥ずかしくて…あんまり言えてないなって自覚はあるんだ」

『欲しいって言ったら、伝えてくれるの?』

「努力するよ!」


私の背中側で、龍之介が ぐっと握り拳を作る気配がする。私はくつくつと喉を鳴らして笑った。


『毎日でも?』

「うん。毎日でも。エリが望むなら。
でも正直、あまり言い慣れててないから…最初はスマートにってわけにはいかないと思う。
でも、頑張るよ」

『私の為に、そうやって考えてくれるのは嬉しい。
でもね、べつに無理する必要はないよ。私は、言いたいから言ってるだけだから。
“ 努力する ” とか “ 頑張る ” とか…そういうのは、ちょっと違うかな。

龍が、言いたいなって思った時に伝えてくれるのが、私は1番嬉しい。
さっきみたいに、ね。

回数が多いとか、少ないとかは、べつにどっちでもいいから。龍の、無理のないペースで十分だよ』

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