第84章 その日が来る事を心待ちにしています
「俺も、どうして彼がLioだった時の君を知っていたのか、気にはなるよ。調べる必要があるとも思う。
でもほら、もう遅いでしょ?だから、調べ物は明日だ。
エリは放って置いたら、いつまでも仕事してるんだから」
『あはは。さすが、龍は私の事分かってるね!それだけ分かってるんだったら…
気になった事はその日の内に調べなきゃ気が済まない。って、私の性分も分かってくれてるよね?』
「あはは。エリも、俺の事をすごく理解してくれてるだろ?
だったら…
俺が、一回言い出したらきかない。って性格なの、分かってるよな?」
あはは。はは。と、両者とも、意味もなく明るい声を発す。しかし、朗らかな笑顔のその反面。2人を包む空気は、明らかにチリチリと焼け付くのであった。
『…ふぅ。分かったよ。今日のところは諦める』
「偉い!」
『でも、ちょっと疲れちゃったから先に休むね。私は寝室に行くけど、龍はまだゆっくりしてていいから』
「分かった。
あ、エリ」
『なに?』
「その手に持ってるタブレットは、ここに置いていこうね」
『っチ』
「こーら!舌打ちしない」
タブレットを用いて調べ物をするという私の完璧な計画は、あっさりと頓挫した。
手元のそれを すっと抜かれて、テーブルの上へと置かれてしまう。
『龍の頑固』
「どっちがだ。まったく…」
『こうなったら、私の部屋にベットを置いてやる!そしたら龍は、私が寝てるのか仕事してるのか分からなくなって止めようがないでしょ!』
「そんな事したらエリは平気で睡眠時間削るから駄目!許しません」
『うー、龍の分からず屋!優しくない!』
「おかしいな。俺は飛び切り優しい男のつもりだけど。エリの前ではね。
そんな俺に、優しくされてくれないのはどこの誰かな」
口角は上がっているのに視線は鋭くて、私は息を飲む。思わず怯んでしまったのを気取られないようにしたつもりだが、果たしてどうだろう。
龍之介は笑顔のままで、ちょっとだけお仕置きが必要かな?と、ただ囁いた。