第84章 その日が来る事を心待ちにしています
「誤解がなきよう言っておきます。ワタシがアナタのシークレットに行き着いたのは、自力ですよ。決して、メンバーの誰かから情報を聞き出したわけではありません」
『何を言い出すかと思えば。そんなことは、分かっていますよ。私の秘密を知る人に、私を簡単に売るような人間はいません』
「Thanks.ワタシに口止めをしなくても、よろしいのですか?」
『必要ありません。そんな事をしなくても、貴方は言わないでしょう』
彼は言葉を返さなかった代わりに、ふわりと口元をほころばせた。澄んだ湖を思わせるブルーの瞳が、私の全部を飲み込んでしまいそう。
『本当に貴方は、綺麗に笑いますね。吸い込まれそうに、美しい瞳…』
「光栄ですレディ。きっと、アナタにそう言ってもらう為だけに、ワタシの瞳は青く染まったのでしょう」
『そういう台詞って、どこで仕入れるんですか?ぜひ後学の為に教えてもらえます?』
「OH…ワタシの口説き文句に、メモを取り出した女性は初めてです…」
ガックリと、俯き加減になったナギ。私は手帳を胸ポケットにしまい、彼を励ます。
『すみません。ドキドキキュンキュン、ってする場面でしたよね』
「いえ、大丈夫です。アナタには既に特別な人がいる事くらい、分かっています。きっとワタシがどのような言葉を用いてアイラブユーを伝えても、アナタの心には届かないのでしょう」
『…驚いた。そんな事まで分かるのですか』
「YES.愛の伝道師、ナギとはワタシの事です。
ところで…どうしてアナタは、十氏を選んだのですか?」