第83章 う〜〜ん、むにゃ…
トウマを起こさないよう、そっと彼のベットから距離を取る。そして窓際に移動してから、まだまだ騒がしい東京の街に目をやった。
ボリュームを抑え、龍之介の声に耳を傾ける。
『どうしたの?何か、あった?』
《 …ううん。何も、ないよ 》
『……そっか』
《 うん。君が、居ないとね。本当に、何もないんだ 》
彼の声は、ひどく遠慮がちで。ポツリポツリと。落とされるような物言いは、私をほんの少し不安にさせた。
『龍?』
《 あっ、ごめん。せっかく1人の時間を楽しんでたところだったのに 》
『なんだ、そんなこと。気にしなくても良いよ。それに…そろそろ、帰ろうかと思ってたところだったから』
《 本当? 》
『うん。お互い、たまには1人の時間が必要だろう。なんて言って出て来ちゃったけど…。あはは、なんだか寂しくなっちゃって』
《 …… 》
唐突に訪れる、長い沈黙。途端に押し寄せてくる、胸のざわめき。
もしかして、呆れられたろうか?軽蔑されたろうか?
自分から、1人の時間を求めて外に出たくせに。やっぱり2人で居たい、なんて…。あまりに、独り善がりだったろうか。
《 良かった。エリも、俺と同じ気持ちで 》
『同じ…気持ち?』
《 うん。
君が隣にいないってだけで、こんなにも寂しい。ついこの間まで、この家には俺1人だったのにね。だから、1人には 慣れていたはずなのに…。
今は1人の時間より、君との時間が、欲しい。
同棲もしてるし、仕事でも一緒なのに、こんな事を言ったら…呆れられるかも。軽蔑されるかも。って、思ったんだけど。
エリに、会いたいんだ。どうしようもなく 》