第82章 TRIGGERを独り占めだね
私達は、まだ気付いていなかった。自分達が今、正常ではないこと。
よくあるゲームになぞらえて言うなら、デバフや状態異常と言い換えることも出来る。
何を隠そう、私達が患っているのは…
“ 無人島ハイ ”
大嵐や大雪などの異常気象などの非常時に、何故だか分からないが気分が高揚した事はないだろうか。きっと、誰しもが経験した事があると思う。
不謹慎なのに、不思議とワクワクふわふわしてしまうあの状態。
まさにそれが、いま私達の身に起こっている。
「それにしても、すげぇ星空だな。こうやって手を伸ばせば、簡単に星が掴めそうだぜ」
『こんな景色も、ここに来なければ拝めませんでしたね』
「本当に。俺、皆んなとここに来られて良かった」
3人は、砂浜で寝転がって語り合った。
そんな私達を、遅れてやって来た人物が覗き込む。
「ボクだけ仲間外れっていうのは、少し酷いと思うけど」
「お、やっと来たか天」
「はは。ほら、天も早く寝転んで!」
4人は、改めて空を見上げる。そして、星々に目を輝かせた天が口を開く。
「なんだろう…。上手く言えないけど、生きてるって感じがする」
「あぁ、それ分かる。今まで味わったことのねぇ幸福感だ」
『さっき龍と、もしここで一生を過ごす事になったら…みたいな話をしていたんですよ』
「…へぇ。
もしも本当にそんな事になったら…
キミは、TRIGGERを独り占めだね」
恐ろしい恐ろしい無人島ハイは、天下無敵の九条天という男でさえも飲み込んでしまうらしかった。