第82章 TRIGGERを独り占めだね
「なんだか俺、ここのところ失敗続きだっただろ?」
彼の言う失敗とは、スイカを粉砕させたり、小舟で沖に出た事を指しているのだろうか。もしそうなら、それは龍之介の責任ではないと思うのだが。
「でも ここに来て、少しは俺も皆んなの役に立ててるのかなって」
『ふふ。確かに。ヤシの実も魚も、全部 龍がとってくれたもんね。
するする木を登る龍も、ぐんぐん泳ぐ龍も、格好良かったな』
「えへへ、そう?」
『うん。惚れ直しちゃう』
「そう言われると照れるなぁ…
ねぇエリ。もしも、俺達がこのまま島で一生を過ごす事になっても…俺がずっと、君を守るよ。
食べ物が買えるスーパーがなくても、俺が魚や木の実をとってくるし。娯楽になるテレビはなくても、俺が君を笑わせる。
だから…ここでも俺を選んでね」
『龍…。ありがとう。
うん。たとえどんな場所でも、どんな時でも、私は…貴方の隣が、いいな』
「……エリ」
『龍之介…』
こんな暗い中でも、龍之介の瞳は綺麗に光って見えた。切なげに、私を求めて濡れている。
きっと、私もきっと、彼と同じ瞳をしているのだろう。だって…私も今、彼との口付けを求めているのだから。
「こそこそと2人で抜け出して、何やってんだ」
「!」
『わっ…楽!』
訝しげな表情の楽は、どさりと乱暴に砂浜に座った。その位置は…何故か、私と龍之介の間であった。
「な、なんで、真ん中?」
『そうですよ、わざわざ狭い場所を選んで座らなくても』
「…ん?そうだよな。なんでだ?
なんとなく、ここに座るべきだと思ったんだよ。なんでかは俺にも分からねぇけど」
「『……』」
(無意識って、恐ろしいな…)