第82章 TRIGGERを独り占めだね
「だから、早くいつもの腹立つ看板持って来いって言ってんだ…頼むから」
『いつもの看板?』
「えっと、ほら…君がいつも持ち歩いてる、ドッキリ大成功!って書いてあるやつ」
『いやべつに、いつも持ち歩いてる訳じゃ…
って、もしかして貴方達…この無人島の件、ドッキリだと思ってます?』
彼らは、何も答えなかった。何も言わず、ただ私を見て目を大きく見開いている。その表情が、態度が “ イエス ” と、物語っていた…
あまりの甘い考えに、私は思わず笑ってしまう。それも、柄にもなく大きな声で。
そして、ひとしきり笑った後…顔から表情を消して、ただ告げた。
『はー……笑った。
って。そんなわけ ないでしょう』
「……嘘だろ」
『嘘じゃないです』
「っ、嘘だって…言ってくれよ頼むから!」
『嘘で良いならいくらでも』
楽は項垂れた。
「う、嘘だよね…!?」
『私、貴方に嘘を吐いた事なんてないでしょう?』
「……いやいや!それはあるよ!!」
『そうですね!!』
龍之介は叫んだ。
「嘘じゃ、ないの?」
『とってもリアルです』
「明日からの仕事…どうしよう」
天は相変わらず仕事人間だった。
へこむ3人だったが、私は妙に納得していた。どうして彼らとの会話が噛み合わなかったのか。どうして天がたまにオンモードになるのか。その全ての謎が解けたからだ。
スッキリとする私の横で、相変わらず3人はどっぷりと沈んでいる。
可哀想に。ドッキリだと思い込んでいた分、ショックが大きいのだろう。
『……』
拾っていたライターを着火してみる。しかし、何度試みても それはうんともすんとも言ってくれない。
私は駄目元で、石の上にライターを置き、別の石でガツンとそれを叩き壊す。
すると、ボワっと青い炎が現れた。幸いなことに中のオイルは生きていたらしい。
すぐさま乾いた流木を放り込み、引火させる。そして、串に刺した魚を並べていく。
『ほら、まずはご飯を食べましょう。お腹が空いていたら、もっと悲しい気持ちになりますから。
大丈夫。なんとかなりますって。
私達が4人集まって どうにもならなかった事なんて、今までただの一度も無かったでしょう。ねぇ?』
火の光に照らされる3人の顔は、さっきよりも少しだけ明るく見えた。